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金正日の正体 (講談社現代新書 1953) 
 日本では北朝鮮に関する知識人として著名な重村智計氏の著作。毎日新聞記者・論説委員の経歴を持ち、現在は大学教授である。今日では氏の北朝鮮論評は世界でも注目される類のものであるようだ。テレビで北朝鮮に関する報道がある際にはコメンテーターとしても活動している姿をよく見かける。氏は北朝鮮問題を論じる第一人者と言ってよいだろう。本書を読めば、氏のジャーナリズムに対する姿勢がよく伝わってくる。北朝鮮に関する報道をするたびに強い妨害に遭ってきていることも述べられているが、そうした妨害に対する反発感情から批判を書いたりするのではない。諸外国からは窺い知れない北朝鮮の内部実情というものを、きちんと系統立てて論理的に(学問的に)把握しようと努めていることが分かる。
 ともすれば、感情的になりがちな日本の北朝鮮への認識あるいは評価があるが、本書の執筆スタンスに触れれば、また別の角度からの「北」の姿が浮かび上がってくる。北朝鮮問題の報道に限らないことだが、日頃からウンザリさせられるマスメディアの偏向報道姿勢を肌で感ずる人にとっては、彼が指摘するジャーナリズムの決定的欠陥に対して大きく首肯するところがあるだろう。これはもちろん氏の論説をも鵜呑みにするのではないことは言うまでもないことだ。だが報道といい、情報といっても、それは必ず「人間」を介して行われるのであって、人間なしに成立などしない。故に情報源である人間の質というものを無視することは愚かである。つまりジャーナリズムは事件事象の真実を追究するものであり、かつその周辺にいる情報提供者の人間としての質を確認し続ける作業であると言ってもよいだろう。出来事の現場にジャーナリストが居合わせるわけではないのだから、どうしてもこうしたスタンスに着地せざるを得ないのである。特に北朝鮮のような工作国家の真実に迫るためには情報提供者の質の問題は避けて通ることができない。氏は接している人間の質を判断し、そこから情報の確度を担保する手法を採り、その上で情報の追試を行うのだそうだ。推測や予断で情報の受け手をいたずらに煽ることのない、実に現実的な取材法であると言えよう。そうした取材態度であるからこそ、氏の論説には説得力を感ずるのである。 
 ともあれ、そうした著者の執筆スタンスが読者に信頼感を抱かせるのと同時に、内容の新鮮さ・ドラマティック性も相まって、本書は実に「面白い」。

・序章だけでも読む価値あり

 序章のタイトルは「情報学のすすめ」である。ここでは「北朝鮮という国家の見方」を説明しているが、そのスタンスは情報に携わる者、とりわけジャーナリストとしてのあるべき姿を語ってやまない。ほんの20ページほどの序章だが、実に示唆に富んでいて興味深い。というよりも、ジャーナリズム世界の標準がこのようでなくてはならないのだと思い知らされる。本書を読み進めてみると、いかに我々が日常接している北朝鮮情報の質が悪いかを痛感せざるを得ない。すなわち、これがマスメディアの現状の質であると換言しても大げさでない。このような状況で流布される北朝鮮情報によって、かの国を「知った気になっている」ことが一番恐ろしいことだ。本書はそうした警告に満ちているし、「それでは北朝鮮の実際はどうなのか」という我々の自然に湧いてくる疑問にも丁寧に応えている。
 だから「面白い」のである。
 ざっと印象に残ったところを挙げてみると、北朝鮮が儒教社会主義を採る国家である(あった?)こと、平壌が集団指導体制を敷いている可能性が高いこと、金正日には影武者(ダブルと呼ぶ)がいること、何度も日本に入国し赤坂で遊んでいたこと、既に死亡しているという説があること、朝鮮総連は北朝鮮の工作機関であり、かつ本国の意向通りの動きをしていないケースがあること、後継者問題を見る時のポイント、北朝鮮高官の人間性の実際、金正日の国家統治手法とマキャベリズムとの符号の考察など、北朝鮮をただ良し悪しだけで見ているのとは違う「真実に迫る気迫」を感ずる文が並ぶ。
 現状で存続している国家を語る以上、最終的結論が書けようはずはないが、金正日総書記という人物を知る手がかりとして、本書は質の良い基本的知識を提供してくれるものであると確信する。
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