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評価:
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スクウェア・エニックス
¥ 5,042
(2007-09-13)
Amazonランキング:
2位
Amazonおすすめ度:
久々にスクエアの本気をみました
確かに
これは
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私自身、ゲームを買うのが本当に久しぶりで、PSPに関してはソフト一本を残して全て手放した。残っているのはパズルゲームの「カズオ」くらいなもので、ハードとしてはニンテンドーDSもPS3も持っていない。今作は久々に期待して買ったタイトルなのだ。以前、ここでファイナルファンタジー7 アドベントチルドレンの記事を書いたが、クライシスコアはFFシリーズでも際立った特色を放っている「7」の最新作となる。今年はFF7が世に出てから10周年なのだそうだ。もうあれが10年も前のことなのである。あの当時、シナリオ上でエアリスが戦線離脱して、私自身が三日間ほど虚脱放心状態になったのがもう10年も前のことになるのかと思い返したりもする。
・FF7の雰囲気がムンムン
思い出す。あの時の、あの感じ。ミッドガルのあの感じ。FF7をプレイしたことがある人なら、こういうチープな表現でも十分に私の言っている事が伝わると信じたい。PSPの電源を入れ、本体を握ったまましばしの感動があった。アドベントチルドレンの設定はミッドガル崩壊後のため、あの雰囲気はほとんど伝わってこないが、クライシスコアはFF7本作よりも前の話である。ミッドガルはバリバリ稼動している。タークスも元気、ソルジャーもたくさんいたのだなと感想を抱く。マテリアの概念や魔洸(ライフストリーム)、古代種、マッドサイエンティストによる生物研究、そしてジェノバ…。これらのキーワードがこのゲームの世界観を力強く支えている。
・ザックスが主人公
今作はFF7ではほとんど出番がなかったザックスが主人公である。プレイヤーはザックスを操ってフィールドを駆ける。キャラのイメージがどうもアドベントチルドレンのそれとは違う気がするのは私だけはないだろう。ゲームはソルジャークラス2nd(セカンド)からのスタートである。発売前のトレーラーでも確認できたが、ジェネシス、アンジール(それぞれ本作初登場)、セフィロスの3人のソルジャークラス1st(ファースト)達と、神羅カンパニーの世界戦略の思惑との交錯、アバランチをはじめとする反神羅組織などの胎動、遥か昔の他惑星からの飛来物(侵略者?)が隠し持っていた真の目的。それらが複雑なタペストリーを織り成しながら物語は進んでいく。ザックスは知ってはならないことを知ったか、あるいは感づいたのか、それ故にFF7であのような結末を迎えたのだろうか。今、我々はFF7が残していた謎を解きに、あの大事件の過去に旅立つ。
・音楽のクオリティに下を巻く
今や音楽抜きにFFが語れないほど、その存在感が強いことは誰もが頷くところだろう。植松氏の手がけたFF7のあの感じ(あえてこう言おう)は更にクオリティを増して10年後のプレイヤーに迫ってくる。その場面の音楽が聴きたくてプレイの手を止めるということがゲームの世界にはあるのだということをまざまざと知る。このソフトにサウンドプレイヤーがあるのかどうかわからないが、あればこの上なく嬉しく思う。ファイナルファンタジーはそれ自体が一つの音楽ジャンルとして確立されたものと言えるかもしれない。YouTubeなんかを見ると、一般人がFFの音楽をピアノで弾いたり、ギターアレンジして演奏している映像が大量にアップされている。著作権に関わるのかどうなのか微妙なラインであろうが、そのプレイクオリティ自体には本当に驚かされるし、何よりそれほどFFの音楽は愛されているということであろう。今作もまたゲーム全編を通して名曲と呼ばれるものが登場するであろうか。それも一つの期待としてゲームに取り組めるのは楽しみな限りである。
・ゲームシステム、プレイ感について
今作はコマンド入力形式のRPGとは少し趣きが違う。コーエーのアクションゲーム「真・三国無双」シリーズとFFがミックスされたような印象と言えば近いだろうか。ザックス自体を十字キー(あるいはアナログパッド)で操作して、敵ターゲットを直接攻撃する形を採っている。もちろん剣も魔法も特技も選択して発動可能だ。昔、ゲームボーイで「聖剣伝説」というゲームがあったが、あれを高度にアレンジして多様性を持たせたものと考えるとそう外れてはいまい。ただ、移動フェーズと戦闘フェーズは切り替わるタイプ(つまりシームレスでない)なので「戦闘シーンだけがアクション」と思っていれば良いだろう。
戦闘になると敵は複数で襲ってくるし、もちろん待っていてもくれない。ボヤボヤしているとあっという間に袋たたきにあってしまう。攻撃も回復もアイテム補助も全てザックス一人で行わねばならない分、瞬間瞬間の判断が求められるので、強敵に会った時などは近づいて攻撃、あるいは補助アイテム使用、敵から離れて回復、敵攻撃が激しい場合は回避または防御、タイミングを計り接近して必殺技、距離を置いて魔法攻撃発動、想定外の状況変化によるフレキシブルな行動選択など、全く忙しいゲームになる。HPやMP等のステータスに目を行かせるのは当然として、現状の行動選択の確認(攻撃、魔法、アイテム、特技などは同時には使えないため、どれかを常に選択しなくてはならない)、敵位置・行動の確認、戦闘情報の確認(敵発動の技や状況変化が表示される)など、頭が混乱してしまうほどの情報量を処理する必要がある。序盤こそ、単純に攻撃を連打していれば通用するような易しい戦闘があるが、中後半になってくるとそのような戦術なしの戦いでは歯が立たなくなる。このゲームを楽しめるかどうかは、まず戦闘の仕組みをよく理解して慣れる事が大切だ。いつでも戦闘方法を確認できるチュートリアルがあり、実戦に慣れるための「ミッション」と呼ばれる本編とは直接関係のない訓練ステージも用意されているので、そこは面倒くさがらずに取り組む必要があるだろう。ものの2,30分もあれば大まかな戦闘感覚を掴む事が出来るはずである。そうなってからがこのゲームは楽しめるものだと思う。
ザックスのステータスとしてはHP、MP、APの3種類が用意される。APは特技に関して消費されるものである。戦闘中はこれらステータス表示が意外と小さいので、常にそこを意識していないとあっという間に底をつくことになる。複数の敵の連打など浴びたら、瞬時にHPが削られていく。プレイ時は特に注意が必要だろう。また、今作は「通販」という形でアイテム購入がどこでも可能になっている。戦闘ごとのステータスの目減りがかなり著しいので、アイテムで補うことが避けられない。回復手段が宿屋やセーブポイントに縛られないフリーランスさは、こうした戦闘システムを採用したことに対する配慮であろうか。ゲームバランスが崩れると最初は思ったが、プレイを続けているとこれはこれで良い塩梅なのかもしれないと感じた。その他にも目新しいシステムが用意されており、例えばマテリアに関しては単体マテリア強弱・成長だけではなく、それらを合成して新マテリアを作り出すことが可能になっている。これなどはやりこみ要素として歓迎されそうな仕組みであろう。それからゲーム内で逐次ザックスに対して「メール配信」がなされいつでも読むことができるようになっている。メールの差出人は新羅関係者(上司・社内報など)だったり、仲間だったり、チュートリアルだったりして、ゲームの進行における全体観や雰囲気といったものをプレイヤーに把握させようとする試みがなされている点も興味深い。
・システムやソフトの挙動に関して
さて、ここからは実際にプレイするに当たって気付いた点などを挙げていきたい。このソフトはPSPのバージョンを3.51以上にすることが必要だ。一般プレイヤーにとっては何のハードルでもないが、PSPに自作ソフトを導入しているような人や、エミュレーターを使う人などはその点を注意しなくてはならないだろう。ソフトはともあれ、エミュレーター自体に違法性があるかどうかは意見の分かれるところでもあり現状では明確な判断がされていないが、ここはそれを詳説するところではないので注意書きに止めておく。
とにかく今作をプレイして一番気になるのは、ゲームの読み込み頻度が少なくないことと、ロード時間の長さに関してである。光学系メディアであるUMDを採用したPSPの宿命的な課題なのだが、やはりゲームを読み込むロードに時間がかかる。ロードが待てないほど長いわけでは決してないし、それに関しては相当開発側も努力をしたのだろうが、やはり気になるといえば気になる。快適にスイスイ進むかと問われれば、「時々ひっかかる感じ」という表現で答えなくてはならない。特にフィールドの移動時、マップが切り替わる度に読み込み作業が必要な点は気にかかった。こうした評価が厳しすぎるという向きもあろうが、率直な感想として述べておきたい。
・総括として
まだ私自身もゲーム進行中であり、最終的な感想を書ける段階でない。ただ、この記事を書いている今も「こんなことをしてないで、早くプレイしたい!」という気持ちを抑えられないでいるのは確かだ。本当の楽しさが出てくるのはこれからだと思っている。FF7本作をプレイした人であれば、つまらないということはないだろう。一つの長編ミステリアス小説を読んでいるような気分だ。スクエア・エニックスらしく、美麗な映像はもちろん今作でも健在で、PSで登場したFF7の映像クオリティを優に超えている。PSPでどこでもプレイできることも嬉しい要素の一つ。
ただ、前述したように今作を楽しむためには戦闘システムに慣れることが必要である。それには少しばかりの訓練が避けられない。私も久々のゲームとあって感覚が追いつかなかったが、今はどんな戦略を立てて進めていくか良い意味で悩ましい。心地よい脳の疲労と、わくわくさせてくれる躍動感が同居している状況だ。今作のようにストーリーと音楽とゲーム性とをそれぞれ十分に楽しめる価値は決して低くはないだろう。ましてあのFF7に接続するソフトである。全方向で楽しんでいきたいと思っている。現状の総括としてはこのくらいだろうか。
・ゲームクリア後の最終総括(9/18追記)
購入後、一気にクリアまで走ってきてしまった。開発には数年の日数と、数百人に及ばんとするスタッフと、膨大な開発費が必要なのに、プレイヤーはそれを数千円と数日足らずで一気に消化してしまう。そして口々に評価や感想を述べるものだ。今はネット上でも相当にホットな話題として賛美・悪口が駆け巡っている時期である。私も自分の立場を明確にする必要があろう。ここで私は今作を賛美する側に回ることになる。
・ゲームとして
ストーリーは分岐形式ではなく、ほぼ一直線で進行する。FF7の本編に矛盾をきたさぬように作らねばならない点で、そこはやむを得ないものと思われる。今作はマップを自由に動き回り、街中を駆け巡り、世界周遊をするといった楽しみ方はできない。イベントに沿ったフィールド以外に行動範囲がないのである。これはゲームの自由度の観点からすると奥深さを提供しにくい仕組みでもあるし、「一度戻って宝探し」などという行動を採ったり出来ないのは残念であった。一度行った所は基本的にもう行くことは出来ない。残念である。
今作のシステムとしてレベルアップやマテリア強化が基本的に運まかせになる点が批判されているようだが、RPGにはそれくらいの不確定要素がこめられている方が楽しみを演出できるように私には思える。予めレベルが上がる予告が経験値で示されるやり方は、ある意味で楽しみの欠如でもあるまいか。今作を通してその点で不満に思ったことはない。マテリア強化に関しては「合成」という仕組みが新たに作られたので、その点での楽しみを追求することが可能である。中毒的に取り組むプレイヤーも出ることだろう。
その他、不満点としてよく目にする意見として冗長なムービーのスキップ機能が実装されていないことが挙げられている。いくら美麗なグラフィックでも、一度か二度見ればお腹一杯である。特に戦闘時に発動するリミット技でのムービーがくどかった。戦闘でのムービーの必要性は主従で言えば「従」であろう。ムービーの存在自体は否定するものではないが、一度見たらスキップすることは可能にした方が良かったと思われる。これがゲームのテンポを鈍らせているようにも感じた。
それから、フィールド操作でのカメラワークの精度にも不満が上がっていた。こちらは実際にプレイに支障が出るほどのものとは感じなかったが、幾分の微調整がなされていれば良かったとは思う。とはいえ、慣れてしまえばどうというほどの問題点ではない。
今作の評価の中で特に割れそうなのは数多い「ミッション」についての考え方だろう。貴重なアイテムやマテリアのほとんどが、ゲーム本編とは直接関係のないミッションで入手しなくてはならないというのはいかがなものか。ミッションそれ自体も狭いフィールドの中で宝箱を探させて、ボスを倒すという単純作業の繰り返しで、段々義務感すら芽生えてくるのを否定できない。「させられているゲーム」は苦痛を伴うものだ。このミッションをもう少し押さえて、ストーリー本編を強化することに容量を回せなかったものか首を捻ってしまう。
戦闘の仕組みに関しては特に不満はなかったが、行動を選択する際にL・Rボタンで選びに行かなければならなかったのは少々面倒であった。苛烈な戦いになると、選択している間に敵の攻撃を受けてしまう。ショートカットか何かが用意されていれば良かったとは思うが、ボタンの数が限られたハードウェアでは現実的ではない要求であろうか。以上、ゲームをプレイするという観点で思うところを挙げてみた。トータルとしては楽しめるシステムであると思う。良作であるからこそ、気になる点も際立つのである。これほどのゲームがPSPで楽しめることは冷静に考えてみれば凄いことである。FF7の名を冠した挑戦的タイトルであることは間違いない。
余談だがプレイ当初、ジェネシスの姿や声があまりにもGacktさんに似ていると思っていたが、実際本人が演じているのだそうだ。(どうりで似すぎていたわけだ)
・FF7が好きなら、迷わず飛び込むべし。但し、悲しみを背負うことになる。
とにかくハッピーエンドにはなりえない内容のストーリーであることは、FF7経験者なら誰にでもわかることである。ゲーム進行途中でのザックスとエアリスの微笑ましい闊達な関係も、終幕が容易に予想される我々には悲劇の枕としか映らない。まさにこのゲームは「最期の悲劇をこの目で見るためにプレイする」のであり、我々がゲームとして楽しむ部分は悲劇の幕間でしかないのだ。それでも何故我々はその悲劇に向かってこの手を動かしているのか。わかりきった結果だからこそ、それがどのようであったのかが我々にとって重要なのである。
考えてみるとソルジャークラス1stのザックスが一般神羅兵に殺されるのは解せなかったものだ。ニブルヘイムで英雄セフィロスにすら打ち勝った男が、病人クラウドを抱えているとは言え、何故無残な最期を遂げねばならなかったのか。本編にはそれに一応の答えが用意されている。だがそれは直視に耐えるものではない。かつてあれほど仕えた神羅から鉛玉の嵐が見舞われる。覚悟を決めた一人の英雄が淡く愛した女を思いながら地に倒れていく…。ザックスはクラウドに全てを与え、誇りそのものである巨大な剣を握らせた。置き換える言葉も見つからない思いを表情に託して彼は画面から去っていった。クラウドそのものがザックスの全人生と代位したのである。残された女は何も知らないことが幸せだろうか。今日もピンクの服にあのリボン、そしてあのカゴでお花を売って歩くという。
それはきっと「エアリスとザックスの誰にも邪魔されない繋がり」を表している。
彼女が何年も音沙汰のないザックスに書いたというツォンに託した80数通の手紙、誰にも開かれることなくあのメテオの日に失われてしまったのだろう。焦がれた女の寂しげな連絡に「わかった、会いに行く」と彼は電話で約束してくれた。あのニブルヘイムでの会話だった。だが結局、会いに行ったのは数年後の彼女の方であった。思えば我々プレイヤーを泣かせたのは後も先もこのカップルである。ザックスは身を挺して後の英雄クラウドを守り、エアリスは星そのものを護った。その代償は…。
長いエンディングは神羅に翻弄されたジェネシス、アンジール、セフィロス、ザックス、クラウド、ラザードらの悲哀が彩られており、エアリスが彼を思う気持ち、そして彼がエアリスを思う切なさ、彼自身の奔放さが物語の悲哀と相まって悲劇の度をいや増している。だが最期まで彼は悲観の様相を見せなかった。強く、明るい存在であった。ソルジャークラス1stザックス、友アンジールの言葉の通り誇りと夢を離さなかった。最期に迎えに来たのはきっと彼なのだろう…。
名画をプレイする感覚。確かにそれがあった。
今、私は満たされている。